「野」と「原」(日本語[国語]辞典の記述)

「野」「原」の辞書的意味はどうなっているのだろうか。国語辞典の場合を見てみよう。国語辞典の全てを調べたわけではないので、その点はご容赦を。
司馬はこの二つ(野と原)の語釈を、意味にうるさい辞書も避けていると言っている。
例として『大言海』を挙げているが・・・。
○『大言海』を見てみると。
「野」:ぬノ転。広き平地。原。ノラ、ノハラ。
「原」:{原、平ト通ズ。或ハ開(ハル)クノ意カ、九州ニテハ、原ヲはるト云フ}一、平ニシテ広キ所。二、耕作セヌ平地。野。三、林(ハヤシ)。
{用例は略す}

このような語釈となっている。これだと、野も原も同じような意味となるか。「はる」というのは、九州、沖縄地方に行くと「原」を「はる」と読む事例があることに気づくはずだ。「西都原」古墳群などのように。

○『新明解国語辞典』初版。初版は面白い語釈が載っているので、いまだ使っている。 
「野」:一、草などが生えている、自然のままの広い平地。(野)原。 二、田畑、のら。「―を耕す」。 (造語)野生の。「―ウサギ、―バラ」
「原」:平らで広く、草などが生えたままの土地。野っ原。

{野も原も同じような意味で解釈している。これはあくまで日本語の語釈だな、という感想があるが、それはおいておこう。}

この二つだけの辞書で、どうこうとは言えないだろうが、司馬遼太郎がしているような「野」と「原」との区別はないようだ。

もっとも司馬が言うように「野」=水田とまで言えるのかどうかという疑問もあるのだが。

上記の国語辞典は、両方とも近代日本語の辞書である。では、古い日本語ではどうなっているのだろうか? 調べてみると・・・!