景観の三分類

 「比較~」というやり方で、比較対象・概念をあまりに広くとりすぎると、生身の人間の実感からは離れてしまいがちになる。東西文明圏の比較もさりながら、流域圏という比較的小さな圏域でも(とてつもない大河の流域もあるが)、流域からは「平地がどれくらいあるかといったことが分かるだけ」で、「どのような景観をもった居住空間であるのか」がわかりにくいという難点がある、と樋口忠彦は言う。

 わかりやすい分類は「景観的なまとまりに着目した分類」だろうと樋口は提案する。「分類と私達がいつも体験している景観のまとまりとがうまく重なり合った時、私達はその分類から自分達の居住地について鮮明なイメージを思い浮かべるはすである」(『日本の景観』50頁)。

 日本人は流域の平地に住み込んできたが、そこでの平地は<盆地><谷><平野>というものである。この三つの類型で、日本人の棲息の場、居住の場を分類すればいいのではないか。そしてさらに三つの小分類を考える。<山の辺><水の辺><平地>の三分類である。そして、これらの大小の分類を組み合わせたものが次ぎの図式である。

分類の図示の仕方、書き方は、樋口の本のそのままではないが、内容は同じ。

 

盆地・・・山の辺
     山の辺+水の辺
     平地+水の辺
     平地
谷・・・山の辺+水の辺
平野・・・山の辺
     山の辺+水の辺
     平地+水の辺
     平地

 

 この三つの分類を見て、なるほどこの分類法をつかうと視覚に飛び込んでくる景観が直観的に判別できると思った。樋口はこれをもとにして、さらに「盆地の景観」「谷の景観」「山の辺の景観」「平地の景観」の四つの景観分類について論じている。

 基本には人間が生きてゆくための棲息適地という考えかたがあると思う。崇高の概念がここからただちに導きだされるわけではないが、「景観」にアプローチするには非常に有効な分類法であろう。