「大和殺すにゃ刃物はいらぬ。亀の瀬滑るだけでよい」という俗謡があるそうな。聞いたことがないけれど、昭和初期の奈良や大阪の人にとっては、すぐにピンとくる言葉だったのかもしれない。「亀の瀬滑る」が何を意味しているかを、少しでも体感するために亀の瀬へ行ってみた。
亀の瀬へ行くには、JRの大和路線の河内堅上駅で下りる。1時間に3本程度は停車する。大和路線は、快速も普通列車のあいだに走るので奈良―大阪間は10分に1本は走っていることになる。これは便利だ。駅で降りると線路に沿って大和川右岸の道がある。左岸は国道25号線でクルマが行き交う道。歩くのは右岸の道で「竜田古道」と名前が付されている。
左手に大和川が流れ、写真は下流方面だが、上流も南北から山が迫っている。
大和路線で何度か奈良へ行った。(普段は近鉄利用が多い。)とくに雨で増水したあと両岸には、ゴミがいっぱい引っ掛かっている。この写真でも白や青や黒というのはすべて、プラスチックか布きれのようなゴミである。大和川は日本で一番水質がよろしくないという汚名をながらく保持してきた川である。こういうのを見るとさもありなん。
しばらく歩くと大和路線のガードの下をくぐる。
道に沿って民家が並ぶ。空き家らしき家も多い。最初は地滑り地帯なのに、こういうところに住む人もいるのかと思ったが、ここは奈良側の関所を通って大阪側に出る「古道」である。家が街道沿いに立ち並んでいたとしても不思議ではない。いまはその昔の街道筋の面影がなくなりつつあるところだろう。
さらに歩くと開けたところに出る。前方に橋が見える。上からみるとこんな石がある。これが亀石ではないかと見当をつけたが、はたしてその通りであった。
亀石が見える近くの手すりにこんな写真がはりつけてあって、たしかに亀のような形をしている。上からは甲羅の部分しか見えないので、下の方に降りよう思ったが、道がブロックされていて降りることはできない。かなり大きい岩で目立つのですぐに亀石と分かる。
上流に新亀の瀬橋がかかっている。橋と亀石はこんな位置関係になっている。下の道路には降りられない。国道25号線から新亀の瀬橋の入口には関係者以外「立入禁止」の看板が立っている。