小田実『「ベトナム以後」を歩く』

南ベトナムサイゴン政府が降伏したのが1975年、南北のベトナムが統一したのが1976年。小田実ベ平連の運動をしていて、68年に一度北ベトナムへ行っている。南北統一後、南へ行ったのが1982年。この本の出版は85年である。それから30年ほどたって古本屋の店先の均一棚からひろいだした。この本の最後に「ベトナム以後」は「ベトナム」だけの話しではない、と書いている。「第三世界」にかかわって世界全体の「以後」の問題を考えてみようということだ。「解放」後それほど経っていない時期であるから、ベトナムはまだ混乱の真最中。麻薬、売春、物資の不足、等々。それでもなんとか食べているのは、ちょうど日本の戦後と同じだと「闇市」派の見方で迫ってゆく。小田は、ベトナムだけではなく、カンプチアにも行ってポルポト政権の大虐殺についてもなにが間違っていたかを考える。この本の後半は「非同盟」の動きに期待をかけることに叙述を割いている。小田のいう「市民」はなんとも立派な「市民」でないところから発想されているところが現在でも通用するのではないか。