書籍・雑誌

隈研吾『小さな建築』(岩波新書)

東日本大震災のあと、「小さな建築」の方向で考え実践してきた記録。建築は災害と密接な関係をもっている。リスボン大地震、ロンドン大火、パリ改造、シカゴ大火と都市の変容とも関連が深い。木造建築から不燃化都市をめざし、さらに鉄とコンクリートという…

内田樹『ぼくの住まい論』

新潮文庫、平成27年1月。元、2012年、新潮社刊。「文庫版のためのあとがき」と光嶋佑介氏の「解説」が付加されている。この本は内田樹氏が、2011年に神戸女学院大学を退職してから、「道場に家をくっつけた」家を建てた記録である。記録といっても、一般人は…

岩合光昭『イタリアの猫』

岩合光昭『イタリアの猫』(写真集)、新潮文庫、平成28年1月。元、2013年7月、新潮社刊。 写真雑誌などで見ると、岩合はよくオリンパスのカメラを構えている。フォー・サーズのサイズだからか、フルサイズカメラと比較して背景が写っている写真が多いようだ…

三浦展、藤村龍至編著『3.11後の建築と社会デザイン』

だいたい20年ほどで3回も大きな地震という経験をした。阪神淡路大震災、東日本大震災、今回の熊本地震である。本当は大きな地震というのは、他の地域でもあったのだが、この三つは私と知り合いがたまたま地震が起こった地域にいて、被害に遭ったり、津波から…

小松健一『三国志の風景』

小松健一『カラー版 写真紀行 三国志の風景』岩波新書、1995年。本の題名どおり、三国志にまつわる中国の地を巡り、写真に収めたもの。95年という出版年代からわかるように、今からほぼ20年前の中国の様子がそこにある。北京、上海、香港などは写っていない…

岩井克人『経済学の宇宙』

岩井克人『経済学の宇宙』日本経済新聞出版社、2015年。別の本を借りに図書館に行ったら、その本の近くでたまたま目にとまったのが、これ。日本経済新聞に五回にわたり連載されて好評だったので、さらに手を入れて出来ている。岩井は、聞き手の前田裕之が「…

山田登世子『贅沢の条件』

山田登世子『贅沢の条件』(岩波新書) この本はシャネル論でもある。ココ・シャネルは少女のころ修道院の孤児院で暮らしていた。彼女は長じて、シャネル・スーツを生み出す。それは、現代の働く女性のファッションだった。20世紀のはじめのことであり歓迎さ…

森枝卓士『カレーライスと日本人』(講談社学術文庫)

講談社学術文庫、2015年8月刊行の本である。同名の講談社現代新書版は以前からある。これに「日本の食文化研究に大きな影響を与えた名著に、その刊行後判明した新事実を加筆した決定版!」と文庫本の裏表紙の宣伝文句に書いてあるように、「補遺」「関連書籍…

斎藤兆史『努力論』

斎藤兆史『努力論』ちくま新書、2007年。斎藤は『英語達人列伝』中公新書、の著者であり、会話コミュニケーション中心主義の英語教育の批判を行っている人で知られている。その人が書いた本だからというので買った。題名は「努力」についてであるが、努力し…

水谷竹秀『日本を捨てた男たち』

集英社文庫、2013年11月。元、2011年集英社から出版。第九回開高健ノンフィクション賞受賞。 副題にあるようにフィリッピンに生きる困窮邦人を取材して書かれたものである。外務省の援護局は在外の困窮邦人の帰国の手助けをしているが、世界のなかで一番多い…

辰濃和男『四国遍路』

四国へ足を踏み入れたのは、まだ宇高連絡船があった時代に、高松へ行った一度きりだった。しかも香大で話しを聞いて、そのまま帰ってしまったからまったく観光もしていなかった。それが、昨年と今年になって四国四県すべてにともかくも足を踏み入れた。鉄道…

小田実『「ベトナム以後」を歩く』

南ベトナムのサイゴン政府が降伏したのが1975年、南北のベトナムが統一したのが1976年。小田実はベ平連の運動をしていて、68年に一度北ベトナムへ行っている。南北統一後、南へ行ったのが1982年。この本の出版は85年である。それから30年ほどたって古本屋の…

川北稔『砂糖の世界史』

川北稔『砂糖の世界史』岩波ジュニア新書は、砂糖という「世界商品」を中心にして近代世界のつながり、歴史的形成を見事に描きだしている。近代世界システム論、歴史人類学の方法を使い、なにゆえに今日のような世界が出来上がったてきたかがよくわかる。世…

内田樹『街場の戦争論』

この本の「まえがき」には、2013年暮れから2014年夏までに10冊以上の本を出したと書いてある。売れっ子も売れっ子というところだが、似たような話が重ねて出てくるのも仕方がない。そこでこの『街場の戦争論』では、似たような話のところをばっさり切ったら…