2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「野」の語義(白川静『字訓』)

白川静の漢字三部作には、『字統』『字訓』『字通』があります。この三部作をつくりあげたというのは、まさに超人というしかありません。この三部作の中の『字訓』から「野」についての記述を引用しておきます。『字統』での「野」の記述と違って、日本語で…

「野」の字源について(白川静『字統』)

白川静『字統』から、「野」の字源について以下に引用しておきます。 以前にあげました『岩波古語辞典』の「野」の解説と比較しますと、これは中国の漢字の解説(解字)です。日本語の古語辞典の解説とは異なることがわかります。といっても、これだけではわ…

邍(ゲン)の意味(白川静『字統』)

邍(ゲン)[原]、これは「原」のもとの、本来の漢字です。これの字源とその意味について白川静の『字統』は相当詳しく解説しています。さすが! この記述を読むと『字統』がなぜ評価が高いのかが分かるような気がします。 ○邍(ゲン)[原]:形声。声符は、辵…

「原」の字源と意味(諸橋大漢和、白川静『字統』)

漢和辞典では諸橋轍次『漢和大辞典』まで参照した。漢和辞典を引いて分からない漢字がでてきても、諸橋大漢和を引けば解決する。とある漢字について、最終的に知りたいというときに、何度お世話になったかわからない。辞典も、諸橋大漢和までくるとほぼ最終…

「野」と「原」の意味(漢和辞典)

それでは漢和辞典での「野」と「原」の意味を調べてみます。 その前に、注意しなければならないのは、中国思想研究者の溝口雄三氏がどこかで書いていたことと記憶していますが、漢和辞典は中国語の辞典ではない、ということです。漢和辞典は日本語の辞典、日…

現代中国語での「野」と「原」

現代日本語、古語日本語での「野」と「原」の語義はどのようなものかと見てきたのですが、はっきりしていそうで、もうひとつ分からないところがあるような、そのような説明のしかたになっていたような気がします。そのなかでも岩波古語辞典は、かなりつっこ…

古語辞典で「野」と「原」を調べてみた

日本語といっても文字文献では古事記、日本書紀、万葉集の時代からある。そこで、古語辞典でしらべてみた。古語もすべての辞典をしらべたのではないので、その点はさしひいてください。 ○『全訳読解古語辞典』第二版、三省堂。題名のように、訳語が用例にす…

「野」と「原」(日本語[国語]辞典の記述)

「野」「原」の辞書的意味はどうなっているのだろうか。国語辞典の場合を見てみよう。国語辞典の全てを調べたわけではないので、その点はご容赦を。司馬はこの二つ(野と原)の語釈を、意味にうるさい辞書も避けていると言っている。例として『大言海』を挙…

「野」と「原」(司馬遼太郎「阿波紀行」)

司馬遼太郎『阿波紀行、紀ノ川流域』の「三好長慶の風韻」のところに(99頁)、「原士」(はらし)という言葉が出てくる。これは、司馬の言うところによると、「湯桶読みだが、稲作できない土地を耕す武士のことであり、阿波独特の制のことである。数は藩全…

司馬遼太郎「三好長慶の風韻」

司馬遼太郎も三好長慶の「古沼」のエピソードを取り上げている。『街道をゆく』32(朝日新聞社)、「阿波紀行、紀ノ川流域」。このなかの「三好長慶の風韻」という節においてである。風韻とは風雅なことをいう。長慶は優れた武将であったが、飯盛城での連歌…

松本健一『泥の文明』における「古沼抄」

花田清輝の「古沼抄」は、松本健一『泥の文明』(新潮社)でも取り上げられている。もっとも、「古沼抄」にある三好長慶の連歌の会のエピソードは、司馬遼太郎も取り上げている。 連歌の会での長慶の付け句は、会の途中で弟の実休入道(三好義賢)が岸和田城…

花田清輝「古沼抄」

花田清輝に「古沼抄」というエッセイがある。(『日本のルネッサンス人』朝日新聞社、1974年、所収)その冒頭は次のような書き出しからはじまる。 「永禄五年(一五六二)三月五日、三好長慶は、飯盛城で連歌の会をひらいていた。・・・誰かが、『すすきにま…

五連の竈(竃、かまど)

土間には(板間とのあいだには)五つの竃が並んでいる。また土間の北側にはさらに大きな竃がある。これは災害などの救恤のときなどに使われたものだそうだが、会所での大人数での集まりなどでも使用されたであろう。汁もの、煮込み料理に使う大鍋が竃にかか…

土間と梁組(鴻池新田会所)

鴻池新田会所本屋の土間と梁組。これほど広い土間を見たのははじめて。鴻池新田を束ねる会所の土間だけのことはある。この土間でいろいろな作業も行われたのであろう。上を見上げると立派な梁組が見える。説明には400年もののクロマツが使われているとある。…

鴻池新田会所本屋

JR住道から一駅、鴻池新田に「鴻池新田会所」が残されている。重要文化財。学研都市線の電車の高架から住道方面に向かうとき右手に見える。あっという間に通り過ぎるけれども、実際に訪ねてみると、たいへん立派な会所であることがわかる。その名の通り、大…