古代ギリシアの世界は広かった

 現代のギリシアは国家財政問題で知られており、EUのなかでもとくに問題視される国である。一般的にいって、EUのなかで問題とされる国はラテン系というか、地中海に面した国に多い。少し前にはアテネ・オリンピックもあり、ギリシアといえば世界地図上のだいたいの位置が思い浮かぶだろう(実はこれが結構難しいようなのだが・・・)。ところが古代ギリシアの範囲、とくに植民都市の分布を見てみると、それは実に広い範囲にわたっている。古代の商業にたけたフェニキアの植民都市とともに、古代ギリシアの世界は地中海一帯に広がっていたのである。ギリシア人たちは、もとは北のほうから移動してきた民族だが、ギリシア半島に来てから、その外へ、海を越えて地中海一帯へと彼らの世界を広げていった。哲学・思想のはじまりは小アジアのミレトスと言われる。ミレトスはギリシア人の植民都市、港湾都市であり、海運交易の盛んな都市であった。古代小アジアに栄えたこれらの港湾都市は、いまでは内陸部になっている。川が土砂を運んできて港の機能が失われてしまった。それとともに都市の繁栄も失われてしまった。外部とのつながりは、思考への刺激を生み出す背景になっていたのである。(121023)