重装兵としてのソクラテス

 ソクラテスは重装兵として三度従軍して重要なつとめを果たしたことは書物によく書いてある。「重装兵としてのソクラテス」というのは、軍隊に参加するには兵備に費用がかかり(自己負担)、それだけの財産資格が問われたので、つまりそれだけの財産がソクラテスにあったということだ。ただしソクラテスは農民クラスであって、騎士クラスではない。騎士クラスはソクラテス以上の財産資格、農民クラスの2.5倍の財産が必要であった。農民クラスとはどれくらいのものかというと、アリストテレスの『アテナイ人の国制』(全集)村川堅太郎の注によると、穀物と葡萄酒を計200メトロン作りうる人を指す。ここで村川氏の注をちょっとそれて葡萄酒だけで計算してみると、1メトロンは39リットルだから、200×39=7800リットルとなる。四合瓶、0.72リットルで割ると、10833本となる。これを365日で割ると1日あたり29.68本となる。一日約30本分を生産できるだけの資力である。この計算は穀物を入れていないのであくまで葡萄酒のみでの計算である。ワインは好きだが、一日にワイン一本はとてもとても飲めない私としてはたいしたものだと感じてしまう。(121113)