刻みこまれた性格

 英語のcharacterは「性質」「性格」「人格」「特性」「人物」「登場人物」等をあらわす。語源はギリシア語でcharacter=刻印の道具、から由来し、「刻み込まれた印」「刻み込まれたもの」から「性格」を意味するようになった。人間の「性格」は、本性的(自然的)に備わっているものではなく、発達の途上で刻み込まれたものが性格になると考えられたということである。このような考え方はアリストテレスの倫理的性状の考え方と同様である。『ニコマコス倫理学』第二巻、第一章で、「倫理的卓越性は習慣づけに基づいて生ずる」「もろもろの倫理的な卓越性ないし徳というものは、決して本性的に、おのずからわれわれのうちに生じてくるものではない」と述べている。知性的な卓越性の発生と生長は教示に負い、経験と歳月が必要だが、倫理的卓越性は「習慣」「習慣づけ」(エトス)による。この違いは大きい。いくら口で言ってもなおらない、ということがよくあるし、あたまで理解していても行動できない、ということもよくあるが、行為に関することがらは習慣づけによることが多い。そのようなことは私たちも了解していて、口先だけを信用するのではなく、行動を見てからその人間を判断するのである。倫理「学」を学んだからといって人間がよくならないのはこのような事情による。(121127)