ポリス的動物

 「人間はポリス的動物」である、というのはアリストテレスの名言であるが、「ポリス的」のところは、政治学では「政治的」動物と訳され、社会学では「社会的」動物と引用され、いずれもアリストテレスが述べたように云々、と説明されることが多い。まったく間違いともいえないが、「ポリス的」としたところで、「ポリス=警察」という観念がはたらいて、アリストテレスの言葉の真意がまげられてしまう。古代ギリシア時代のポリスは、現代の言葉でいう社会、政治、国家、警察の観念とはいずれもずれている。そのため古代ギリシアの「ポリス」なるものを知っているという前提で、「ポリス的動物」と言うしかないだろう。「社会」という言葉にしたって、そもそもヨーロッパの言語のなかでも、また日本語においても明治時代以降の新しい言葉であるから、同じような問題をはらんでいる。要するに、私たちは言葉をつかって考えているが、その考えは時代の制約をうけていることを承知したうえで展開することが必要なのである。面倒なことは面倒だけれども、そこに歴史的な感覚も働くというものだ。(121204)