川北稔『砂糖の世界史』

川北稔『砂糖の世界史』岩波ジュニア新書は、砂糖という「世界商品」を中心にして近代世界のつながり、歴史的形成を見事に描きだしている。近代世界システム論、歴史人類学の方法を使い、なにゆえに今日のような世界が出来上がったてきたかがよくわかる。世界商品には、茶、綿織物、石油、自動車などがあるから、砂糖以外の「世界商品」のどれかを軸にして考えてみる出発点ともなるだろう。(すでにそのような研究はなされているが。)イギリスには行ったことがない私は、この本でポリッジの話しを読んでなるほどと思った。イーグルトン『ゲートキーパー』にもポリッジの話しが出てくるのだが、ヨーロッパ大陸の朝食しかしらない私にはいまひとつ理解に欠けていたところがあった。イギリスで留学生活をしていた漱石はポリッジに閉口してイギリス人は馬になったと書いたそうだが、さすがにロンドンで生活してからの体験的感想だったわけだ。食べてみないとわからないものがあるが、あまり食べたくなるようなものでもないらしい。川北のこの本は1996年に初版がでて、2014年に33刷りにもなっている。宜なるかな