斎藤兆史『努力論』

斎藤兆史『努力論』ちくま新書、2007年。斎藤は『英語達人列伝』中公新書、の著者であり、会話コミュニケーション中心主義の英語教育の批判を行っている人で知られている。その人が書いた本だからというので買った。題名は「努力」についてであるが、努力しなくても読むことができる。しかし内容は壮絶な努力の内容が紹介されている。英語達人の西脇順三郎新渡戸稲造たちが出てくるのは当然として、なんといっても興味を引かれたのは、河口慧海諸橋轍次であった。とくに諸橋の大漢和にお世話になったことがあり、なんというとてつもない辞典なのだろうという感想を抱いていたから、この諸橋大漢和辞典がどのようにしてつくられたかの一端を知ることができ有益だった。大修館書店の鈴木一平、写真植字の石井茂吉、その他百名以上がこの辞典の完成のために努力したとある。東京護国寺に「大漢和辞典刊行記念の碑」があるということだから、一度立ち寄ってみたい。とにかく偉人と呼ばれるような人は、志の立て方が違い、行動も違うと、自分の凡庸さを再確認するには良い本である。