天武の勅令:肉食禁止令

 歴史学研究会編『日本史年表 増補版』(岩波書店、1993年)に、天武天皇の時代、675年年4月に「狩・漁の方法を制限し、牛・馬等の肉食を禁ずる」とある。天武の勅令といわれる肉食禁止令である。年表の記述にはないが、この「牛・馬等」の「等」のなかに、犬、猿、鶏がはいっていたようだ。今の感覚からすると、牛、馬、鶏はわかるが、犬、猿は日本ではまず食べない。韓国では犬料理は高級料理(値段が高いという意味で)であり、中華料理では猿も食べると聞いたことがある。肉食文化と米食文化の対比があり、日本は肉食文化ではないと言われるが、日本では古代から動物の肉は食べられてきた。その肉のなかに犬と猿がはいっているようなのだが、想像をたくましくすれば古代日本の渡来人の食文化の伝達をも想定できるかもしれない。まだ大化の改新のころならば、中国、朝鮮半島から多くの渡来人がやってきて居住しており、大和には文化の多様性にあふれていたと考えることができる。数年前のことだが、古代の日本にはあった「醍醐」なるものを復活させたものを食べたことがある。まさしく「醍醐味」であった。こういうものがなくなっていくのと「日本」なるものの確立がひょっとしたら表裏をなしていたのかもしれないとも思う。(121221)