三浦展、藤村龍至編著『3.11後の建築と社会デザイン』

だいたい20年ほどで3回も大きな地震という経験をした。阪神淡路大震災東日本大震災、今回の熊本地震である。本当は大きな地震というのは、他の地域でもあったのだが、この三つは私と知り合いがたまたま地震が起こった地域にいて、被害に遭ったり、津波から逃げたりしたという行動をとったというかたちで、こころに刻まれている。20年という時間は、日本で人間が生きていると何らかの災害に遭う可能性がそこそこ高いということを示している。三浦、藤村編著の本は、2011年の東日本大震災のあとのシンポジウムの記録である。津波ゆえの被害が甚大だったのが特徴だが、熊本地震のあとに読んだので一気に読んでしまった。題名とおり建築と社会デザインという分野からのアプローチである。日本社会のシステムは転換期にさしかかっているが、従来通りの方向でしか進んでいないのだな、というのがよくわかる。津波のあと、遠野から太平洋の海岸をみてまわった。そのときまだ入居前の仮設住宅、入居後の仮設住宅も見せてもらった。あたらしい設計をしているとその時に紹介されたが、あたりまえではないか、としか思わなかった。阪神、淡路大震災の経験が或る意味で生かされ、べつの意味ではまだ日本社会は課題を前にしてまだ変わっていないと、この本を読んで思い至った。今後のことについていろいろヒントがころがっている。まだ今後の進路が大きくは変わっていないなあと、2011年から5年たっても考えざるをえない。家族の形、住宅の形、制度の形についてそれほど変わっていないから。