神戸の街ガイド これが最良

 神戸の街の最良ガイド本というのは、島田誠森栗茂一『神戸 震災をこえてきた街ガイド』岩波ジュニア新書である。岩波ジュニア新書だから、観光ガイドブックのコーナーには置いてないことが多い。というより置いてないだろう。観光ガイド本コーナーには、「キャー、チョー・カワイイ」「オイシイ」系のものばかりで、街の生活の来し方・行く末を紹介する本は置いていない。神戸は95年に震災があった。また水害も戦災もあった。そういう災害を越えてきた街に生きる人に思いを寄せるという意味で「最良の」街ガイド本がこれだと思う。神戸の観光客は北野の風見鶏の館までは行っても、そこから50mほど西に行き、さらに50mほど山手にあがることはほとんどない。そこにはおおきな沈砂池がある。その沈砂池のところに立って神戸の街を見下ろすと、北野の住宅地のなんとすぐ裏手にあることか、いかに土砂とたたかいながら街が成り立っているかがわかる。島田・森栗の街ガイドは「沈砂池」をきちんと紹介している。これは一例にすぎないが、神戸の人々の生活の歴史の紹介としてすぐれているのが、このガイド本である。大人も「ジュニア」新書を手にとって初歩から学ぶことは多い。(121020)