生物多様性という認識

 近年になってから、日本において生物多様性という認識がひろまりつつある。かなり前になるが、1971年に野生のコウノトリを保護のため捕獲した。これは象徴的なできごとだった。1972年にリオデジャネイロ生物多様性条約が締結された。しかし、日本が締結するのは1993年までかかった。2008年になってようやく生物多様性基本法が成立した。近年になってからというのはこういう経過があるからだ。鳥獣保護法ができたのも1963年である。それ以前は天然記念物保存法で保護することになっていたが、保護対象は鳥と哺乳類だけだった。魚のブラックバスが日本に持ち込まれたのは、1920年代にさかのぼる。その頃には生物多様性というような認識はまったくなかった。守るべきものは絶滅危惧種のみかというと、そうではなくなってきている。生物多様性という概念には守るべきものは自然であるという考えがある。生態系についての認識がそれだけ進んできているということだが、なにかひとつの種のみを保護するか、しないかという議論に的を絞り込みすぎると生物多様性概念のもつ広がりを見失うことになりかねない。