「秋津洲の道」という道標がまれにある。「まれ」なので役に立たない。観光地ではないので、観光客はいない。歩いている人もいない。帰りのことを思うと、バス、鉄道の路線を行動範囲から失わうと困ったことになりそうな予感がする。出雲の丘陵地を歩いたときよりも見晴らしはきくが、たいへんそうな場所に思えた。
それでも歩いていると、いろんなものに出会う。川の水とか農業用水の豊かさだとか。
ミツバチが飼われているようで、いくつもミツバチの家があった。
これはサトイモの葉だと思う。小さいとき、ズイキ芋とも呼んでいたように記憶する。この葉っぱを傘の代わりにして遊んだ。もう長いことこの葉っぱを見ていないので、なんだかなつかしく眺めていた。
むこうに見える丘が目的地。できるだけ近い道をと、田んぼのなかの畦道をとおる。丘が見えるかぎりは大きく間違うことはないだろうと、近いほうへ近いほうへ。
丘の左手の一番高いところに上がるつもりで。