御社尾の磐座(都祁山口神社)

f:id:m-yoshidam:20191123223746j:plain

社殿右手の池と「御社尾の磐座」指示標

 都祁山口神社には磐座がある。「ごしゃお」のいわくらと呼ばれている。社殿の背後からの湧き水の池の縁に、磐座への指示標がたっている。これは見てみようと指示標にしたがって登る。思いのほかきつい。

f:id:m-yoshidam:20191123224456j:plain

御社尾の磐座への道

 このように山道に根っこが張っていてうっかりすると足をとられる。この写真の一番上の真ん中にちょっと写っているのは都祁直霊石といわれるもの。ちょっと気配を感じてカメラを向けなかったのだが、ここに写っていた。霊石のところには、お供えものがある。

f:id:m-yoshidam:20191123225010j:plain

階段状にされた石

 道の真ん中に大きな石が露出していて、石には刻まれて階段状になっている。このような石があるのなら、磐座はどのようなものだろうか、興味が湧いてきた。

f:id:m-yoshidam:20191123225310j:plain

磐座前の鳥居

 磐座前には鳥居がたっている。大きな岩が鳥居の向こうに見える。

f:id:m-yoshidam:20191123225524j:plain

御社尾の磐座

 なんとかして岩そのものを撮ろうと思ったのだが、横に回りこめないので、こんなところがせいぜい。それでもこの小山の山頂にこれだけの巨岩があると磐座信仰の対象となるのは当然だろうと思う。

 大きな岩は神の依代として磐座信仰の対象となってきた。自然宗教の信仰の対象として代表的なものである。ここから降りながら、地形をみると、磐座がある頂上からV字形の谷となっていて、その谷の下に湧き水と社殿がある。磐座へは尾根筋を登る。降りも谷を右手に見て、左手には奥地の耕作地らしき方向を推測しつつ降りる。降りて社頭に立つとなだらかに傾斜する水田が北の方向にひろがっている。

f:id:m-yoshidam:20191123230628j:plain

都祁山口神社社頭からの眺め

 なにげなく、いい眺めだとばかりに見ていたら、田んぼのなかに木がたっているな、と気づいた。さらに鳥居がその木の根元のところにある。ああこれが「森神」さん(様)とよばれる神木かとどこかで読んだのを思いだした。岩石と同じく樹木も神の依代となる。こうして見ると、都祁山口神社には、水、岩、樹木と自然宗教としての神道の要素が揃っていることがわかる。しかも水分神社としては典型的な地形の配置である。そしておそらく昔から今までこの信仰が守られている。今もこの神社はきちんと保持されているのが、周囲の自然環境の保持にもいかされているのではないだろうか。

 たしかに樋口忠彦がいうように、この自然は「人跡未踏なワイルドな自然景観」ではない。私はワイルドな自然景観(wilderness)にも意義を認めるが、この都祁山口神社の周囲に広がる自然を日本的な景観として大いに認めたいと思う。