浅沢社から細江川を越えるとすぐに大歳社(大歳神社)がある。鳥居の奥に平屋の社殿が見える。大歳社は、大歳神(おおとしの神)が祀ってあり、収穫の神様であって、集金・商売繁盛・家内安全・願望成就に神徳があると案内文には記されている。
建物からは住吉大社の社殿のような威厳というようなものは感じられないが、ともかくも庶民の願いを満たしてくれるという神徳がある神社である。
の社殿のすぐ右手においとしぼし社というのがあって、そこに「おもかる石」という丸い石がある、と案内文にはあるのだが、行ったときはコロナ禍で「石」はなかった。
「おもかる石」と彫ってある石柱の上には、コロナ禍なので「石」は載せていないという旨の紙が貼り付けてあった。
「初辰まいり」の最後の社殿で、種貸社、楠珺社、浅沢社、大歳社と参り、集金・収穫に感謝してしめくくる、とされている。この四社は、偶然なのか、そうと思えば辰の方角(東南東)にだいたい並んでいるような。正確ではないでしょうが。
種貸しの「種」は種、子種、資本金(元手のカネ)など複数の意味があるが、大歳社ではどうも集金満足・商売繁盛にご利益があるとされていて、商売に利益がある神様とされているようで、ナニワ集金道的な意味合いになっているようだ。
そこで「大歳神」っていったいなんだろう、という疑問がわいてくる。「おおとし」は漢字で書くと「大年」、「おおみそか」の老人語。[大歳とも書く]、と『新明解国語辞典』(初版)にはある。「老人語」などと最新版では書いていないだろうが、「おおとし」の隣にある「おおどしま」(大年増)も「女盛をとうに過ぎた、四十代・・・」と今ではちょっと書けない語釈がついている。
大歳は「大年」でもあり、大晦日のことをも指す。そういえば、年の市(歳の市)というのがあって、一年のしめくくりの市という大売り出しの市がひらかれるのを私たちは知っている。そこで「年」と「歳」とを同じような意味で使っていて、じっさいに同じ意味なのだが、それでも「おおとしのかみ」は「大年神」と書いてあることもある。むしろこちらの「年」のほうが本来の意味だったかもしれない。