手塚治虫『ぼくのマンガ人生』

古本屋で、手塚治虫『ぼくのマンガ人生』岩波新書を見つけて購入。マンガから遠ざかっていて岩波新書でこのような本がでているとは知らなかった。1997年初版で、買ったのは2013年28刷りだから相当売れているようだ。ほぼ同時代的にマンガ雑誌で手塚の連載ものをとびとびに読んでいた記憶がある。この新書版は手塚の講演を集めて文章化した本だが、この本のなかでは大阪大空襲の記述が印象に残った。三国でスレート屋根の素材をつくる学徒動員をうけていたこと、大空襲に遭ったこと、淀川の堤防で多数の死体を見たこと、宝塚へ歩いて帰る途中、民家を訪れおにぎりを恵んでもらったこと、その民家は二三日後に空襲にあって無くなってしまったこと、・・・。戦争の体験が風化してゆき、手塚以下の世代では直接体験を伝えることができなくなってきていると手塚は考えている。それは手塚マンガの主題に強く反映していることがよくわかる本だ。