2019-01-01から1年間の記事一覧

景観の三分類

「比較~」というやり方で、比較対象・概念をあまりに広くとりすぎると、生身の人間の実感からは離れてしまいがちになる。東西文明圏の比較もさりながら、流域圏という比較的小さな圏域でも(とてつもない大河の流域もあるが)、流域からは「平地がどれくら…

流域圏と景観の概念

樋口忠彦『日本の景観』は、第一章では自然景観と意識との関係を扱い、第二章では日本の景観のフィジカルな構造を扱っている。(この本の、目次の章立ては漢数字、柱はアラビア数字で記載しているので注意。)第二章の「はじめに」のところは、短い箇所だが…

景観への意識(樋口忠彦『日本の景観』)

樋口忠彦『日本の景観』春秋社 これは昭和56年10月発行、樋口忠彦の景観論。副題に「ふるさとの原型」とついている。現在では文庫本もでているようだ(未見ですが)。景観論の名著と言われるようになっているのではないかと推測する。この本を古書店でみつけ…

小野小町の遺跡(随心院)

随心院には小野小町の遺跡がいくつかあります。寺の建物内にもいくつかあります。小野小町文張地蔵、卒塔婆小町座像、榧の実など。 いったん外に出ると、目の前に名勝「小野梅園」。 小野梅園 この近くから薬医門を見る。 随心院薬医門 堂々たる門です。寛永…

随心院(京都山科)の建物(表書院、本堂)

随心院の表書院に入ると、両側の障子が開け放たれており、風が通る。暑い日だったが、ここは涼しい。 随心院表書院 右手の廊下を渡ると本堂にゆく。 随心院本堂 随心院の本堂は、西暦1599年の建築。寝殿造りとなっている。蔀がつり上げられている。 本堂の先…

随心院の建物(庫裡、玄関、本堂をのぞむ)

随心院の由来は、弘法大師から八代目の弟子にあたる仁海僧正による牛皮山曼荼羅寺という寺の建立がもとになっている。西暦991年のこと。このちょっと変わった寺の名前は、仁海僧正の亡くなった母が牛に生まれ変わっている夢をみたことから、牛を飼っていたと…

小野(京都市山科区)の隋心院

京都にある「小野」という地名は、山科区にもある。今では「小野」は地下鉄の駅名ともなっている。地下鉄御池から御陵で六地蔵へ向かう線に乗り換える。 「小野」駅で降りて、隋心院までは少し歩く。東の方向をとるので山が見える。西の方向を見ても山(東山…

「小野郷」(京都市北区)

京都市北区に小野という地名がある。周山街道を通るときは、いままでただ通り過ぎていた場所である。「小野」という地名をたどってから、京都市の北区にも小野という地名があるのに気づいた。杉阪の道風神社まで来たからには、どういう地形のところか少しで…

道風神社(杉阪道風町)がある地形

道風神社の境内には、和香水の石碑がある。説明文が彫ってあるが、古びていて読むのに困難。隣に内容を訳した文が紹介してある。読めなくもない程度なのだが、読む気力をなくしていた。立て札の方を先に読んでしまっていたから、心理的にもういいやとなった…

道風神社(京都市北区)の狛犬

道風神社狛犬右 これは道風神社の狛犬、参道の右側にあるもの。 道風神社狛犬、左 これは道風神社参道の左側にある狛犬。苔むしています。 台座の上に鎮座していて、立派な狛犬です。ここを通りすぎると、もう一対の狛犬が座っています。 道風神社狛犬(小、…

道風神社の参道で(積翠池)

道風神社は「とうふう」と「どうふう」の二つの呼び方がされているようだ。案内板には二つ書いてある。「とうふう/どうふう」とある。 名前の正しい本当の読み方は「みちかぜ」なのだが。有名になり、「とうふう」は尊んで音で名前が読まれるようになったも…

道風神社の入口(京都市北区)

小野道風の神社は京都市北区にもある。右京区かとおもっていたら北区だった。右京区や北区は、合併で京都市の区域が格段に拡がったので昔の感覚とずいぶんちがう。小野道風の神社はその名も「杉阪道風町」にある。ここに京都の町中から行くには鷹峯から京見…

高野川(京都市上高野)

崇道神社参道に近いバス停は京都交通の「上橋」。その上橋から見た高野川。 上橋から高野川上流を見る 水が澄んでいて川底の石まで見える。橋の下流に堰があって水がせき止められているので、こんな流れになっている。上流は山の狭間を高野川が流れているこ…

崇道神社(京都市左京区)

崇導神社鳥居 前回にも書いたが、いまでは小野神社は崇道神社の境内のなかにあるような形になっている。鳥居のところからまっすぐに社殿までの参道が続いている。鳥居の文字は「崇導」神社となっている。京都市の解説板では「崇道神社」。したがって地図も両…

小野神社(京都上高野)

古代の小野氏の本拠地は、山背国の小野だった。京都には小野の地名はいくつもあるが、本拠は今の上高野の小野。高野川が流れ、比叡山の方向にむかって両岸に山が迫ってくるところである。京都バスの上橋停留所で降りると、京都市内から見る比叡山とちがって…

小野妹子墓(大阪府太子町)

小野妹子墓(太子町)への石段 近江にある小野妹子墓とされる唐臼山古墳のほかに、大阪府南河内郡太子町にも小野妹子墓がある。「太子」町だから聖徳太子にまつわる遺跡もたくさん残っている土地柄である。科長神社に向かって右側、南側にかなり長い石段があ…

唐臼山古墳南側からの眺め

唐臼山古墳南側からの眺め 唐臼山古墳の南側には展望所があって、そこからは琵琶湖大橋を見ることができます。遠くに三角形の山が写っているのは野洲にある三上山。すぐ下は小野の住宅地で左手のほうに湖西線があり、JR小野駅があります。このような位置関係…

小野妹子神社

小野妹子神社 小野妹子神社です。社殿のすぐ後が唐臼山古墳。前回のブログの写真に少しだけ写っています。この右手に案内板があって、外交・華道の祖神とあります。外交のほうは、遣隋使で有名で、日本史の教科書に必ず載っています。607年に遣隋使となり、…

唐臼山古墳

雷雨が小降りになってようやく目的地の小野妹子神社へと向かう。神社があるところはいまは水明というところの小高い丘にある唐臼山古墳というところ。そこからの眺めはよい。 唐臼山古墳からの眺め(北側) 雨雲が動いていったすぐあとで、まだ薄暗い感じが…

小野妹子神社への路

小野道風神社から小野妹子神社へと歩く。石段下の駐車場を通り抜けても行けたのだが、よくわからなかったので、あちらの高台だろうと、だいたいの方向を見て歩く。 いったん低いところに下がると丹出川という小さな川がある。 丹出川 橋の名前は丹出小橋。わ…

小野道風神社

小野道風神社。小野道風は小野篁の孫。藤原佐理、藤原行成と並んで三蹟の一人。和の書の基礎を築いた人として有名です。 神社社殿への石段の下に柳と蛙の置物があります。柳の向こう側には琵琶湖が見えます。 小野道風神社の柳と蛙 小野道風と言えば、柳に飛…

小野道風神社への道

小野道風神社への道 おの神社から両側に民家のある細い道を通り抜け、石神古墳群のところを通り、道風神社まで辿る。道標をみながら進むが、これでいいのかな?というところもある。 おそろしく暑い日で、夏雲がわきあがっていた。 石神古墳群 石神古墳群の…

しとぎ(粢)

小野神社の水田 小野神社の鳥居の横の社地には水田があって、こちらにも木製の鳥居としめ縄が張られています。この水田は「しとぎ祭」(粢祭)に使われる米を栽培しているのでしょう。水田のとなりには神社の横とを通ってきた水路があり、水がたっぷりと流れ…

小野篁神社と小野小町供養塔

小野神社の境内のなかには、小野篁神社と小野小町供養塔があります。 小野篁神社はこちら。 小野篁神社 石段の下から見るとこちらの神社の建物が大きく、こちらが小野神社の本殿のように見えますが、これは小野篁神社。小野氏の一族は、学問、芸術にすぐれた…

小野神社(滋賀県大津市小野)

小野妹子の父の代から、大津市の小野が小野一族が住む土地となったようです。そしてその後、志賀の小野が小野一族の本拠地とも意識されるようになっていったようですが、それは数世代あとのことのようです。 小野神社の駐車場の横から入ると鳥居の前にでます…

近江の「小野」の風景

古代の小野氏は山城の小野(上高野)から近江の小野へと移っていった、と前回に触れたが、では近江の小野とはどのようなところだろうか。まずは地形から。 小野神社という小野氏の始祖を祀る神社がある。ここに行くには、京都から湖西線に乗ると、JR小野駅で…

京都の「小野」

○京都の「小野」について。 柳田國男は「地名考説」でも京都の小野について言及している。(柳田、定本20巻、85頁) 「京都の四方にも無数の小野があり、其中では琵琶湖西に在るものゝ如き、奠都以前より既に屋號になっていた。しかもこの一族の名士、小野毛…

小野という地名(柳田國男『地名の研究』)

前回に紹介した柳田國男の『地名の研究』(定本第20巻)の「野」についての記述の続きに、「小野」という地名について記している。「野」は緩傾斜地を表す日本語であるが、それだけではなく、谷、沢といったような地形についても野という名称を与えたと柳田…

柳田國男の地名研究における「野」の意味

白川静『字訓』での「野」の意味の解説は、『字統』での解説にはない意味が入っていました。そのもとは『岩波古語辞典』の「野」:「広い平地。多く山裾の傾斜地などにいう」と書かれているように、日本語になって生じた意味が取り上げられているように、漢…

「野」の語義(白川静『字訓』)

白川静の漢字三部作には、『字統』『字訓』『字通』があります。この三部作をつくりあげたというのは、まさに超人というしかありません。この三部作の中の『字訓』から「野」についての記述を引用しておきます。『字統』での「野」の記述と違って、日本語で…